合併症と日ごろの備え
リンパ浮腫で最も気を付けたい事は、合併症を起こさないことです。
そして、もし合併症で最も危険な皮膚細菌感染症を発症してしまった時には、すぐに診ていただけるようご自宅近くで血液検査のできる、かかりつけ医を持つことをお伝えしております。
症状次第では、即入院となることもあります。
普段から通っているお医者様が遠くてタクシーで向かっている間に熱が高くなってしまい、そのまま入院する、
というケースも耳にしております(蜂窩織炎のケース)。
そのため、セルフケアの第一の目的は、リンパ浮腫のある腕や脚をよく観察して普段と違う様子が見られたら、すぐに対処できるようにするためです。
そして、普段と何か違う違和感を感じた時には、マッサージや圧迫は、一時お休みしてください。
お医者様の診断後、マッサージや圧迫を開始して良いお許しをもらってから再開してください。
マッサージの予約をされている場合には、キャンセルのご一報をいただけましたら幸いですが、お気持ちが落ち着かれてからでも構いません。
代表的な合併症
《急性炎症》
・蜂窩織炎
・丹毒
・リンパ管炎
小さな傷から細菌が入ることで皮ふ表面やリンパ管内で炎症が起こります。発症は急激で、全身に高熱が出るものもあります。
対処方法は、抗生物質の投与が必要となることが多いため出来るだけ早くお医者様に診察してもらうことです。診察を受けるまでは、赤く熱を持った患部を氷水の氷嚢で冷やしてください。
《急性皮膚炎》
急性炎症とよく似ている症状が見られますが、処置方法が、急性炎症と急性皮膚炎とでは異なるため、血液検査が有効です。(急性皮膚炎の場合、炎症反応の有無が蜂窩織炎などとの鑑別の1つとされます。)
急性皮膚炎では、お薬よりも圧迫処置の方が有効なことがありますが、いずれの処置もお医者様の診断が必要です。
《リンパ液の過貯留によるもの》
・リンパ小疱
・リンパ漏
リンパ液の貯留が多くなり過ぎるとみられる症状です。
皮ふ表面にリンパ液が溜まり行き場がなくなった結果、押し出されて小さなできもの(小疱)が出来ます。この小疱が破れリンパ液が漏れだした状態がリンパ漏です。皮膚が破れてしまうと、痛みを伴いますし、傷口がふさがるまでに時間が掛かります。
対処方法は、圧迫を十分にすることです。もし、リンパ液が染み出してきてしまうような場合には、リンパ液を吸水できるようにガーゼなどを充ててから圧迫します。できるだけ、小疱の状態で発見し、小疱が破れないようにして、リンパ漏になることを回避していただきたいです。
《QOL・生活の質を低下させるもの》
・線維化
・関節機能の障害
たんぱく質とリンパ液が、時間が掛かって混ざり合うと、次第に浮腫が硬くなります。
これが線維化です。
皮膚表面が硬くなったりもします。ガザガザの状態まで進んでしまうと象皮症(ぞうひしょう)と呼ばれる症状になることもあります。
また、液体であるリンパ液は、関節付近に溜まることが多く関節の曲げ伸ばしを邪魔したり、神経を圧迫して、しびれが出現することがあります。
長い間何もケアすることなく放置してしまうとこのような状態が見られやすくなりますので、リンパドレナージマッサージや圧迫、保湿を普段から行い、リンパ液が過剰に貯留することを防ぐことが、対処方法となります。
《その他》
・白癬症(水虫)
足指に浮腫が顕著な場合には、足指同士の間に隙間が無くなり、蒸れることで皮膚がふやけてめくれやすくなったり、白癬症に掛かりやすくなります。
指包帯などで、浮腫の増悪を防ぎ、指の間を清潔に保つことが大切です。白癬症菌は、24時間以上皮膚に付着することで発症すると言われていますので、毎日、指の間を洗浄し清潔に保つことで防げます。
最も気を付けたい合併症
先に挙げた合併症の中で、発症の確率が高くまた、最も気を付けたいのが蜂窩織炎(ほうかしきえん)です。
予兆もなく急に発症することが多く、また全身の高熱が出ることがあるからです。
その他に腕や脚が赤くなり、熱を持ちます。
蜂窩織炎の場合には、出来るだけ早くお医者様の診断を受けて対処していただくことが大切です。先にも挙げました通り、炎症反応があるかを調べることが大切なので、血液検査のできるお近くのお医者様と良くコミュニケーションを取っていただきたいと思います。
合併症を繰り返すとリンパ管もダメージを負うのでリンパ浮腫が悪化することにつながります。
日ごろのセルフケアを充実していただけるようお伝えしております。